母が亡くなり、不動産の相続登記が必要になりました。必要書類を揃えることから、法務局への登記申請まで、自分でやったところ、無事完了できました。私は司法書士でないし、知識もありません。そのため、相続登記のやり方を勉強しながら、登記の手続きを進めました。
今回は、3つの登記が必要なことが判明した経緯と3種類の申請方法からオンライン申請を選んだ理由を公開します。
最初に考えたのは、相続登記って、言葉は知ってるけど・・・?
相続登記とは、不動産の所有者や共有者が亡くなった場合に、不動産の名義を変更する手続きのことです。法務局に相続登記の申請を行うことで、不動産の名義を亡くなった人から相続する人に変更できます。
法務局から「登記完了証」と「登記識別情報通知」を受け取った時点で、相続登記は完了です。
登記識別情報とは、登記完了時に発行される英数字12桁の文字列で、登記名義人となった申請人のみに通知されます。
登記申請の際、本人確認に使われるため、人に知られないよう、大切に保管する必要があります。
なお、登記完了証が登記申請で必要になることはありません。
不動産登記法の大改正で、オンライン申請が導入された2005年以後、権利証の代わりに、登記完了証と登記識別情報通知が発行されるようになったそうです。
画像出典:法務省ウェブサイト (https://www.moj.go.jp/)
相続登記の義務化スタート
2024年4月1日以降、不動産を相続した人は、3年以内に登記申請しないと、10万円以下の罰金過料対象になります。2024年4月1日以前の相続にも適用されるので、登記しないで放置している人も2027年3月末までに登記しないと罰金過料の対象になります。
次に考えたのは、登記状況を把握して、必要な手続きを明確にすること
自分で相続登記をやる場合でも、司法書士に依頼する場合でも、相続する土地と建物の登記状況を把握して、必要な手続きを明確にする必要があると考えました。そのため、実家の土地と建物の登記情報を把握することからはじめることにしました。
権利証(登記済証)で、地番を調べる
一部の例外を除いて、住民票の「住所」と登記簿の「地番」は違います。そこで、私は「実家の地番」を調べました。地番は権利証で確認できるので、私は実家の断捨離をしながら、権利証探しからはじめることにしました。
権利証は、「登記済権利証書」「登記済証書」「登記済証」などと記載された立派な表紙があるものと思っていました。
ですが、実家の権利証に立派な表紙はありませんでした。法務局の朱印のある書類であれば、それは権利証とのことでした。
ちなみに、この朱印の写真は、私が実家で見つけた権利証に押されていたものです。
実家で見つけた土地の権利証では「所在」と「地番」、建物の権利証では「所在」と「家屋番号」を確認できました。
地番を利用して、登記簿を確認する
続いて、実家で見つけた権利証は最終のものか?登記簿で確認することにしました。権利証に記載された「地番」と「家屋番号」を利用して、土地と建物の登記簿を取り寄せれば、確認できる筈です。
登記簿の取り寄せ方を勉強したところ、ネットから取得できることが判りました。2種類の方法があることが判りました。
- 法務省が運営する「登記ネット」
- 民事法務協会が運営する「登記情報提供サービス」
何処かに提出するなど、登記簿そのものが必要な場合は、登記ネット一択ですが、登記簿の記載内容を確認できるだけで十分な場合は、登記情報提供サービスが良いようです。
登記情報提供サービスは、不動産の登記情報をネット上で確認できるサービスです。登記ネットより、スピーディーに確認でき、安価です。
そこで、私は、登記情報提供サービスを利用しました。
私が見つけた「権利証の記載内容」と「登記情報提供サービスで確認できた登記情報」は同じでした。その結果、実家で見つかった権利証は最終のものと判断できました。
3つの登記申請が必要なことが判明
相続する土地と建物の登記情報は以下の通りでした。
- 土地
- 共有者 母:持分4分の2
- 共有者 姉:持分4分の1
- 共有者 私:持分4分の1(登記簿上の住所は引越前のもの)
- 建物
- 共有者 母:持分6分の4
- 共有者 姉:持分6分の1
- 共有者 私:持分6分の1(登記簿上の住所は引越前のもの)
母の遺言が無かったので、法定相続人の姉と私の2人で遺産分割について話し合った結果、私が母の持分すべてを相続することになりました。同時に、姉の持分についても私の名義に変更し、不動産の共有を解消することになりました。
そのため、私が以下3つの登記申請を行うことになりました。
- 住所変更登記(私の住所変更)
- 相続移転登記(母から相続する不動産の名義変更)
- 贈与移転登記(姉から贈与を受ける不動産の名義変更)
単純な相続なら、相続登記は自分でやれる
私は、住所変更登記、相続移転登記、贈与移転登記、3つの登記申請をお願いした場合の見積をネットから司法書士に相談してみました。
回答は、1案件ごとに8万円で、合計24万円。公的書類の収集や必要書類の作成なども依頼すると、別途費用が発生するとのことでした。相続登記の書類作成をお願いする場合は、最低14万円~で、公的書類の収集を外すことはできないとのことでした。
法務局に支払う登録免許税も別途掛かることを考えると、司法書士に払う費用がもったいないし、複雑な相続でもないので、相続登記を自分でやることにしました。
ちなみに、司法書士からは、相続人が配偶者や子供だけで、複雑でなければ、自分で相続登記をやることを検討してもよいとのアドバイスをもらいました。ただし、手間や専門知識が必要なので、根気がない方にはおすすめしていないとのことでした。
自分でやるのは避けるべき相続登記
以下に該当する場合は、自分で相続登記をやるのは避けるのが賢明と司法書士からアドバイスをもらいました。
- 書類の書き方を誤ると贈与税が発生する場合
- 相続する人が相続しない人に金銭を支払う「代償分割」
- 不動産を売った金銭を分け合う「換価分割」など
- 相続登記を放置していた不動産がある場合
- 戦前など、ご先祖名義の不動産(旧民法の法律知識が必要)
- 保存期間を経過した書類が必要な場合
- 相続が複雑な場合
- 兄弟姉妹の相続、子供などが代わりに相続する代襲相続 など
- 相続人同士の仲が悪い場合
登記申請、3つのやり方
書面申請とは
書面申請とは、申請書を紙で作成し、法務局に持参する方法です。
法務局での事前チェックも可能ですし、申請内容に不備があった場合、その場で訂正することも可能です。登録免許税の支払いは、印紙納付が一般的だそうです。
郵送申請とは
郵送申請とは、申請書を紙で作成し、法務局に郵送する方法です。
申請内容に不備があった場合、補正のために、法務局を訪問する必要があります。登録免許税の支払いは、印紙納付になります。
オンライン申請とは
オンライン申請とは、インターネットを利用して申請書を作成し、法務局にインターネット送信する方法です。
ICカードリーダライタやマイナンバーカードなど、電子署名できる環境が必要です。けれども、申請内容に不備があった場合でも、自宅からオンライン補正できます。しかも、登録免許税の支払いに、インターネットバンキングを利用できます。
オンライン登記申請しかない!と思った
相続登記に限らず、不動産登記は、登記する不動産の住所を管轄する法務局に申請する必要があるそうです。
住んでいる最寄りの法務局で申請できるわけではないそうです。
私は、東京都豊島区在住ですが、相続する実家の不動産は茨城県土浦市でしたので、水戸地方法務局土浦支局に登記申請書を提出する必要がありました。
豊島区内の法務局では、相談もできませんでした。
そのため、自分で相続登記をやる以上、選択肢はオンライン申請しかないと思いました。
提出 | 修正 | 納付 | |
---|---|---|---|
書面申請 | 法務局へ持参 | 持参時に法務局で補正 | 印紙納付 |
郵送申請 | 法務局に郵送 | 改めて、法務局を訪問・補正 | 印紙納付 |
オンライン申請 | 法務局にネット送信 | 自宅からオンライン補正 | ネットバンキング |
不動産登記のオンライン申請メリットは、日本全国どこの不動産でも自宅から申請できることです。しかも、夜9時まで申請できるので、仕事が終わってからでも申請作業ができます。登録免許税をネットバンキングで支払えるのも便利でした。
私の場合、オンライン申請後、申請情報の修正が必要になり、オンライン申請画面に補正が必要との情報が表示されました。
けれども、私は土浦の法務局を訪問することなく、自宅のパソコンからオンライン補正できました。
補正内容の説明とともに、法務局の担当者名と電話番号も表示されていましたので、法務局の担当者に電話で問い合わせ、補正のやり方について、アドバイスをもらいました。
私は、オンライン申請を利用したおかげで、時間と交通費を節約できて良かったと感じています。
オンライン登記申請の事前準備
インターネットに接続できるパソコンがあれば、無条件に不動産登記のオンライン申請ができるわけではありません。
電子署名のための準備
オンライン申請のための準備をはじめる前に、電子署名できるようにする必要がありました。
- 電子署名とは
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電子署名とは、その電子文書が原本であることを証明する「電子的な印鑑」のことです。電子署名することで、原本であること・改ざんがないことが証明され、安心・確実なオンライン手続きが可能になるとのことです。
まず、マイナンバーカードとICカードリーダライタを用意しました。マイナンバーカードは、署名用パスワード(6~16桁の英数字)が設定されたものが必要でした。ICカードリーダライタは、ネット通販で1,000円程度でした。ちなみに、パソコンは「Windows」が必須です。
続いて、ICカードリーダライタでマイナンバーカードの情報を読み取り、電子署名するためのソフトウェア「JPKI利用者ソフト」をパソコンにインストールしました。不動産登記のオンライン申請では、添付書類を含むすべての申請情報を電子署名して、提出する必要があります。
「JPKI利用者ソフト」は、国と地方公共団体が共同で管理する法人「地方公共団体情報システム機構」のウェブサイト「公的個人認証サービス ポータルサイト」からダウンロードしました。
- 公的個人認証サービスとは
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公的個人認証サービスとは、インターネットを通じた安全・確実な行政手続きを行うためのサービスです。様々な行政手続きで、マイナンバーカードを利用したオンライン申請を可能にします。
これで、自宅のパソコンで、マイナンバーカードを使った電子署名ができるようになりました。パソコンとマイナンバーカードで、e-Taxを利用している人は、ここまでの準備は完了していると思います。
オンライン申請のための準備
マイナンバーカードを使った電子署名ができる準備が済んだら、自宅のパソコンから法務局にオンライン申請できるようにしました。そのためには、3つのステップが必要でした。
申請者登録
申請者登録は、ブラウザで「登記ネット」と検索し、「登記・供託オンライン申請システム 登記ねっと 供託ねっと」にアクセスしたうえで、「申請者情報登録」をクリックし、ページの案内に従って、申請者登録しました。
登記・供託オンライン申請システムとは、法務局の窓口に出向くことなく、インターネットによる申請・請求ができるシステムのことです。不動産登記だけでなく、商業・法人登記などでも利用できます。
申請者の登録を完了し、申請者IDとパスワードを取得しないと、オンライン申請は利用できません。
申請用総合ソフトのインストール
申請者IDとパスワードを取得したら、申請用総合ソフトをパソコンにインストールします。
「登記・供託オンライン申請システム 登記ねっと 供託ねっと」の「ダウンロード」をクリックし、インストールしました。
ICカードの設定
インストールした申請用総合ソフトで、マイナンバーカードが使えるように、設定する必要がありました。
ICカード設定の流れは、以下のとおりです。ICカードを設定できたら、オンライン申請のための準備は完了です。
- 「処理状況表示」画面の「ツール」>「オプション」
- 「ICカード切替」>「登録」
- (ICカードカードライブラリの登録確認)「OK」
- (ICカードカードライブラリの登録完了)「OK」
- (使用するICカードライブラリを選択)「公的個人認証サービス(個人番号カード)」を選択>「適用」
- 「設定」
上の要領で設定できますが、詳細な設定方法は、以下のページを参考にしてください。
終わりに
次回は、相続登記の前に必要になった住所変更登記の体験を公開します。